動的光散乱式 粒度分布測定装置
一般的に、熱運動下での粒子の光散乱強度を取得することは、「動的光散乱法 (Dynamic Light Scattering; DLS)」というナノ粒子の物性評価法の1つして知られています。NANOPHOXは、動的光散乱法の1種である「光子交差相関法 (Photon Cross-correlation Spectroscopy; PCCS)」(Sympatec英語サイトへ)を実装した測定装置です。簡単な操作だけで、0.5~10000nmの高濃度スラリーおよびエマルションの粒度分布を高解像度に測定できます。この方法で、ナノ粒子の粒子径、粒度分布、多分散性、分散安定性などが評価できます。
光子交差相関法では、1つの試料に対して光源と検出器を2つずつ用いることで、測定時の多重散乱の影響を排除できます。そのため、高濃度の試料でも、より高い真度で測定できます。これによって、粒子の凝集や沈降を区別できるだけでなく、粒子間相互作用や粘度変化などの効果についても評価可能になります。NANOPHOXは、研究開発や品質管理用途に最適です。適用例として、ポリマーのスラリーやエマルション、医薬品エマルション、インク、ナノ粒子などが挙げられます。たとえば、薬学や生化学分野では、原薬キャリア用ナノ粒子のドラッグデリバリー性能の評価などに活用されています。
動的光散乱法の伝統的な測定手法の1つとして、「光子相関法 (Photon Correlation Spectroscopy; PCS)」があります。この手法は、1つの光源と1つの検出器で、散乱光強度の自己相関を測定します。しかし、この手法では多重散乱が影響するため、妥当な測定結果を得るためには、試料を高倍率に希釈する必要があります。これに対して、光子交差相関法では、1つの試料に対して2つの独立した光散乱強度を同時に取得します。この両方の信号の相関性を解析することで、個々の信号に重畳された多重散乱の影響のみを打ち消します。そのため、光子交差相関法は、光子相関法では適切に測定できない高濃度の試料でも、正しく測定できます。なお、光子交差相関法はISO 22412 (JIS Z 8828) で規定されています。
NANOPHOXは、目的の測定結果が素早く得られるように工夫されています。高濃度のサンプルでも希釈が不要であることが多いため、煩雑な試料の前処理が必要ありません。また、高希釈された試料では、異物がわずかに混入しただけで再調製が必要ですが、高濃度の試料ではこのような汚染に対してもよりロバストです。
適切な測定結果を得るには、光学系の調整が不可欠です。NANOPHOXでは、光源の出力値や測定位置の調整を自動で最適化する機能を備えており、最適な測定条件を簡便に設定できます。また、NANOPHOXでは、市販の光学ガラスセルやアクリル製セルが使用可能です。さらに、専用のマイクロキュベットを使うことで、50µlというごく少量の試料も適切に測定できます。
NANOPHOXは、0.5nm~10,000nmという広範囲の粒子径を、体積濃度約20%まで測定可能です。また、30mWの高出力半導体レーザーと高感度のアバランシェフォトダイオードによって、最小体積濃度はわずか10-4%まで測定できます。NANOPHOXは光子交差相関法と光子相関法の両方の解析モードを備えているため、このような広い濃度範囲に対応できます。
NANOPHOXは精密な温度制御装置を備えており、0~90℃の範囲で正確に制御できます。そのため、各温度における試料の分散状態を簡単に測定できます。そのため、粒子間相互作用や動粘度の変化など、集合体の微視的な現象も定量的に評価できます。
専用の制御ソフトウェアPAQXOSで、NANOPHOXの全機能にシームレスにアクセスできます。測定条件設定、測定結果表示、データ出力を、すべてグラフィカルなインターフェースで直感的に操作できます。また、測定中は相関関数がリアルタイムに表示され、粗大異物の混入などをその場で検知できます。
PAQXOSでは、従来の「キュムラント法」に加えて、より効率的な「非負拘束付き最小二乗 (Non-negative Least Squares; NNLS) 法」が利用できます。非負拘束付き最小二乗法では、多分散やバイモーダルの試料をより適切に解析でき、それらの結果を、最大256区分の体積または強度基準の分布として出力します。そのため、粒子径の算術平均値またはシングルモードの調和平均値などの特性値を直接利用できます。
PAQXOSでは、一連の測定条件やデータ出力を標準操作手順 (Standard Operating Procedure; SOP )として登録できます。そのため、品質検査などで同種の試料を繰り返し測定する場合に有用です。さらに、PAQXOSはFDA 21 CFR Part11の要件を全て満たしているため、製薬業界で求められるデータインテグリティにも対応します。